急に映画が見たくなり、上映中のなかから『怪しい彼女』という韓国映画を観てきました。
ここ10年で5,6回くらいしか映画館に行けてなかったのですが、
調べてみると、この監督の前作は偶然見ており
それが『トガニ~幼き瞳の告発』という、実話をもとに描かれた
社会派のとても重い感情が揺さぶられる作品。
今回は正反対のファンタジーコメディでいったいどうなるんだろう?、と思いましたが
めいっぱい笑わせながらも、人情の機微にしみわたり
やはり、こみ上げてくるような涙を流して帰ってきました。
まずびっくりしたのは、舞台になっていた下宿先。
雨をためる大きなかめ、ガラスの感じ….、ドアを開けるときのギギッという音。
どうもデジャブな感じだと思っていたら
先日行ってきたばかりのソウルの小さな宿でした!
なんだかご縁を感じて早々にうれしい^^
(ここからは映画の内容に入ります、これから見る予定の方はご注意)
現在70歳、主人公のおばあさん。
子どもを生んですぐに、夫を失うという苦難が襲いかかり、
踏みつけられるような惨めなくらしに。
どんな手を使っても、子どもを生き延びさせようと鬼気迫るくらしを重ね
おかげで一人息子は国立大学の教授にまでなったのですが
その自慢だけが生き甲斐になり、
いつしか周りから鬼といわれるようなキツイ性格になってしまいました。
そのせいで人間関係がいつもうまくいかず
同居している嫁は病気送りになってしまう始末。
クサクサする日々の中で、ふと見つけた青春写真館なる怪しい店。
そこで撮影したことをきっかけに、なんと50年若返り
20歳の見目麗しい姿に変化します。
最初はパンチパーマヘアで、立ち居振る舞い、性格もおばあさんのままだったのですが
おしゃれを覚え、いまどきの服を思う存分ショッピングして
どんどん可愛く、誰からみても魅力的になっていきます。
ある日、若者(じつは自分の孫)がやっているバンドにスカウトされ
試しに歌ってみると、さすが人生を重ねて来ただけあって、胸を締め付けるような表現力。
「今のやつらとぜんぜん違う、なんて個性的なんだ!」と
プロの目にも留まるようになって注目を浴び
遊びも恋も経験し、初めて青春の果実を味わいつくします。
いよいよ歌手としてスターダムを駆け上がろうとした矢先に孫が交通事故を起こし、、、
孫を救うには、すぐにも自分の血液を輸血する必要がある事態に。
しかし、血液が体外にでることによって
もとの容姿に戻ってしまうことをおばあさんは知っていました。
その葛藤を事情を唯一知る友人と話しているところを
おばあさんがキツイ性格になるほど苦労して育てた息子が陰で聞いていました。
息子は母親が、野菜の屑を拾っている姿、
自分の足に紐を結んで、離れないようにして働く姿、
夜になると自分を抱きしめて泣く姿をそっと回想します。
そして言うのです。
僕の息子は、父親である僕がなんとかするから
何も心配しないで、これからはあなたの人生を歩んで、と。
苦しみしかなかった自分の人生だったけれど
全部わかってくれている、
こんなにも思いやってくれる家族がいる。
やっとつかんだ今の幸せにもちろん未練はあります。
しかし、こう答えます。
もし、もう一度生まれ変わっても、
寸分たがわず同じ人生にして、またお前に出会いたい。
自分の人生を心から肯定できた。
ここのやり取りが泣けましたね。。。。
70歳と20歳の間にいる今だから感じるのですが
実際は、若いときは若いときで、どんなに見た目がピチピチで体力があっても
不安で自信がなくてしんどいんですよね。
若いことが当たり前で、価値が分からない。
70歳の自分もなんとなく想像できるようになってきたのですが(年をとりました! 笑)
ある日突然変わるのではなく、どこまでもこれまでの積み重ねの先にある。
だから、今、どんな境遇であったとして、今を大切に生きる以上のことはない。
人生の目標。。
人それぞれ、いろんな内容があると思います。
わたしも、大きなことから小さなことまで目標を立てるのが好きで
それをクリアする生き方を
ずいぶん長い間してきたような気がします。
ところがここ数年かけて、少しずつ変化してきて
2014年の今は
「人生って素晴らしい!」と心の底から言えること。
これがわたしにとってのいちばんの幸せじゃなかろうかと感じます。
そう感じられるような日々を重ねたい。
自分で自分の人生が肯定できた瞬間、いつでも人は幸せになれる。
そんなことを教えてくれた映画でした。
ああ、また今すぐに劇場に見に行きたいです^^
樂庵 かなざわ
RAKUANのおしごと